君を探して
駅のホームでの待ち時間はほとんどなく、私たちは同じ電車に乗った。

まず先に降りるのは私と陽人で、ヤマタロの降りる駅はその2つ先だ。

ヤマタロに別れを告げ、陽人と2人で電車を降りると、外はすでに小雨が降り始めていた。

私たちは早足で家路を急いだ。

陽人の早足に合わせると、私はほとんど小走り状態になる。

それでも陽人に置いて行かれないように必死に歩きながら、私は言った。

「なんだか久しぶりだよね、こうやって2人で歩くの」

「ああ、そうだなー」

「最後に帰ったのはいつだったっけ?」

「……おまえが慎と別れた日」

あぁ、そうだ。

そうだったよね。

陽人はあのとき、私を心配して駅まで迎えに来てくれたんだよね。

ジョギングするふりなんて、下手な真似して……。

「そういえば! 陽人、もうジョギングはやめたの?」

「ん?」

「私が帰るとき、よく走ってたじゃん。最近見かけないけど」

「あぁ……あれは、もう、やめた」

陽人は前を向いたまま、もう一度言った。

「もう、いいんだ」

陽人の歩調がさらに早くなった。

私は黙って、その陽人の後を追いかけた。

急いで帰ったせいで、家はもう、すぐ目の前だった。
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