君を探して
帰りの電車はほぼ満員状態。

私は右手でつかんだ吊革に自分の体重を預け、電車の揺れに身を任せていた。


目の前に座っているのは、同じ高校の制服を着たカップル。

後輩かな?

付き合ってまだ間もないのかも知れない。

なんだか初々しさが残る2人だった。


彼氏が彼女の耳元に口を寄せて何か小声でささやくと、彼女は嬉しそうに彼氏の腕に自分の腕を絡めた。

彼の肩に頭をのせて、クスクス笑う彼女。


車内に次の駅のアナウンスが流れると、2人は一緒に立ち上がり、私の目の前を横切って、次の駅で降りるために扉の方へ向かった。


立ち上がってみると、意外に彼氏は背が高い事が分かった。


その姿を見て、私はハッとした。

……なんとなく、ヤマタロに似ている。

背格好も、

優しい表情も。


その時、電車がガタンと揺れた。

彼女の足元がふらついた瞬間、彼氏が彼女の肩を抱く。


また、彼氏がヤマタロに見えた。


別人だって分かっているのに。

まるで、ヤマタロが私の知らない女の子を抱いているみたいで、私の鼓動が早くなった。
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