君を探して
それは、力任せの抱擁だった。

私を抱きしめるヤマタロの腕は強くて、私は全く身動きがとれない。

「ちょっと……ヤマタロ、苦しいよ……?」

私がそう言うと、ヤマタロの腕に更に力が加わった。

「痛いってば……ねぇ、ヤマタロ!」

私は、なんとか自由のきく右手を少しずつずらしてヤマタロの背中に回すと、ヤマタロの背中を思いきり叩いた。

「ちょっと……ギブ! ギブ! ギーーーブ!!」

ヤマタロに抱きしめられてドキドキしない訳じゃないけれど、でも、この体勢は苦しすぎて。


その時、ヤマタロが私を強く抱きしめたまま、言った。

「うるさいなぁ……少し黙っとけ。オレがどれだけ我慢したと思ってるんだ……」

そして。

さらに腕の力を強めて私を抱きしめたまま、

「あぁー。やっと捕まえた……」

って、耳元で呟いた。



きっと女の人を抱くのなんて慣れっこのはずのヤマタロには似合わない、不器用な、力ずくの抱擁。

強く密着したヤマタロの胸から、ヤマタロの心臓の音が聞こえてきた。

その音は、私の心臓よりもずっとずっと早くて大きかった。


「ねぇ、ヤマタロ。鼻がつぶれちゃうよ……?」

「責任取ってやるから、黙っとけー」


私は黙って、目をつぶった。
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