きみらしさ
「来たんじゃないか?」

ガチャガチャと音が聞こえて体育館の入り口を見ると、吹部が楽器とパイプ椅子・譜面台を持って入ってきた。


「こんな人数の前で演奏するの久しぶりだね。」

由依の声が聞こえて、俺は声がする方を見た。

「あまり下手な演奏聞かせると、この学校に入ってくれなくなるかもな。」

由依が話しているのは男だった。

上履きの色を見る限り同学年らしい。。

「花崎、男と話してるな。」

俺が苛立っているのを分かっていて、秋人はあえてそう言った。


制服を崩さずにきちんと着ていて、眼鏡さえ一点のくもりもないようなその男。

いかにも優等生らしくて、正直由依の隣が似合っていて悔しかった。

由依はああいうタイプの男が好きなのだろうかと不安になった。

あの男は由依のことを狙っているのだと一目瞭然で分かったけど…。


同じ部活で共通の話題がある男と、同じクラスでもほとんど会話をしたことのない男

どちらが優位かなんて、歴然だった。
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