きみらしさ
「春くん。」
「なに?」
俺は校舎裏に呼び出されていた。
目の前にいたのは、入部したころからよく差し入れしてくれた子だった。
「あの…、付き合って下さい!」
顔を真っ赤にして言う姿は単純に女の子らしくて可愛いと思った。
だけどその時俺の耳に、吹部が練習している音が届いていた。
音楽には詳しくなくて、どれがクラリネットの音なのかすら分からない。
そのくせに、由依のあの笑顔がふと脳裏に浮かんだ。
「ごめん。…好きな子いるんだ。」
俺の言葉に、目の前にいた子は目を丸くした。
「春くんって、好きな子いたんだ。」
随分意外そうな顔をしていた。
「いないように見えた?」
「え、うん。…そっか、だから今まで誰も告白成功しなかったんだね。」
そう言ってその子はすこし辛そうな顔をして去って行った。
「ごめん。」
その子に悪いなと思いつつ、耳に届いてくる雑多な音の中にクラリネットの音が交ざっていないか気になって仕方なかった。
あの時改めて、俺は由依が好きだと思ったんだ。
諦めるにはまだ早いと思ったんだ。
「なに?」
俺は校舎裏に呼び出されていた。
目の前にいたのは、入部したころからよく差し入れしてくれた子だった。
「あの…、付き合って下さい!」
顔を真っ赤にして言う姿は単純に女の子らしくて可愛いと思った。
だけどその時俺の耳に、吹部が練習している音が届いていた。
音楽には詳しくなくて、どれがクラリネットの音なのかすら分からない。
そのくせに、由依のあの笑顔がふと脳裏に浮かんだ。
「ごめん。…好きな子いるんだ。」
俺の言葉に、目の前にいた子は目を丸くした。
「春くんって、好きな子いたんだ。」
随分意外そうな顔をしていた。
「いないように見えた?」
「え、うん。…そっか、だから今まで誰も告白成功しなかったんだね。」
そう言ってその子はすこし辛そうな顔をして去って行った。
「ごめん。」
その子に悪いなと思いつつ、耳に届いてくる雑多な音の中にクラリネットの音が交ざっていないか気になって仕方なかった。
あの時改めて、俺は由依が好きだと思ったんだ。
諦めるにはまだ早いと思ったんだ。