三度目のキスをしたらサヨナラ
耳を澄ますと、微かにゴホ、ゴホという声が聞こえてくる。
それは、ソウが私に聞こえないように携帯電話を遠ざけて咳をしている音だった。
「……ソウ、もしかして具合悪いの?」
「ん……ちょっとまって……」
電話の向こうでしばらく咳が続いた後、さっきよりも更にかすれ声になったソウが電話口に戻って来た。
「うん……これでもだいぶん良くなったんだけどね」
「いつから?」
「東京から帰った日。帰りの新幹線の中は最悪で、死にかけてたよ」
あぁ。
それって、絶対私のせいだ。
漁港では防波堤の上で、冷たい風から私を守ろうとずっと盾になってくれていた。
最後の夜も。
急な雨に降られて濡れたあと、車内のエアコンの温風を私に向けてくれていた──。
これではソウが風邪をひくのも当たり前だ。
「……ゴメンね、ソウ」
「ううん、ミナさんが謝ることじゃないよ」
「だって……」
「それより! 俺はむしろ、最後の日にウーさんのお店が閉まってたことに腹を立ててるんだけど」
だけどその口調は決して怒っていなくて、むしろ楽しそうに聞こえた。
「ごめん……でもね、あれはね……」
「いいよ、もう」
ソウは優しく、言い訳しようとした私の言葉を遮った。
それは、ソウが私に聞こえないように携帯電話を遠ざけて咳をしている音だった。
「……ソウ、もしかして具合悪いの?」
「ん……ちょっとまって……」
電話の向こうでしばらく咳が続いた後、さっきよりも更にかすれ声になったソウが電話口に戻って来た。
「うん……これでもだいぶん良くなったんだけどね」
「いつから?」
「東京から帰った日。帰りの新幹線の中は最悪で、死にかけてたよ」
あぁ。
それって、絶対私のせいだ。
漁港では防波堤の上で、冷たい風から私を守ろうとずっと盾になってくれていた。
最後の夜も。
急な雨に降られて濡れたあと、車内のエアコンの温風を私に向けてくれていた──。
これではソウが風邪をひくのも当たり前だ。
「……ゴメンね、ソウ」
「ううん、ミナさんが謝ることじゃないよ」
「だって……」
「それより! 俺はむしろ、最後の日にウーさんのお店が閉まってたことに腹を立ててるんだけど」
だけどその口調は決して怒っていなくて、むしろ楽しそうに聞こえた。
「ごめん……でもね、あれはね……」
「いいよ、もう」
ソウは優しく、言い訳しようとした私の言葉を遮った。