三度目のキスをしたらサヨナラ
馴染みのない巨大な東京駅で、私はまず、新幹線のりばを探すことから始めなければいけなかった。

周囲を見回し案内板を探す──たったそれだけの動作さえもどかしくて、通りすがりのサラリーマンに行き方を尋ね、広い駅構内を人混みをかき分けながら足早に駆け抜ける。



──私は、走りながら、何度も「早く、もっと早く!」と叫んでいた。



改札手前の券売機では、その反応の遅さに何度もボタンを押してしまった。

そして受取口からゆっくりと出てくる切符を強引に引き抜くと、改札を抜け、ようやくホームへと続くエスカレーターまでたどり着いた。

だけど、肩で大きく息をして、ホッとしたのも束の間で。

次の瞬間、エスカレーターの先に見えているホームから、発車を知らせるベルの鳴り響く音が聞こえてきた。

「あぁ、もうっ!」

何に腹が立っているのか分からないけれど、思わずそんな言葉を吐き捨てる。

私は、エスカレーターの左側に行儀良く1列に並んで立つ客の横、右側に空いた空間を上まで一気に駆け上がった。


ホームに出ると新幹線は既に停車していて、乗客の長い列が、開いた扉からみるみる車内へと吸い込まれていくところだった。

耳をふさぎたくなるけたたましいベルとアナウンスの中、私がその最後尾について列車に乗り込むと、すぐにその扉は閉まった。


息を切らしながらデッキの壁にもたれかかると、その冷たさが私の火照った身体を徐々にクールダウンさせる。

携帯で時間を確認すると、18時50分。
ウーさんのお店を飛び出して、30分が経とうとしていた。


──あとは、座っていればいいんだ。



こうして、私を乗せた新幹線はゆっくりと東京駅を離れ、西へと向かった。


< 187 / 226 >

この作品をシェア

pagetop