三度目のキスをしたらサヨナラ
彼は「よいしょ」と言いながら私の前であぐらを組んだ。

「あなたって、本当に不思議な人だね。ラーメン屋ではあんなに大人っぽくて近寄りがたかったのに……今はこんなに、頼りなさげな女の子だ」

少し身体を丸めて、私の顔をのぞき込む。

私は涙が止まらなくて、そんな顔を彼に見られたくなくて、
また自分の膝に顔を埋めた。

「きっとオレのせいだよね。……彼のこと、思い出させちゃった?」

私は膝に顔を埋めたまま
「うん……」
と答えた。


さっき彼に肩を抱かれたとき、私は蒼太のことを思い出していた。

もう二度と私を守ってくれることのない、その温もりを……。


「……どうして……追いかけてきたのよ……」

「さっき、横断歩道を渡ってるあなたの後ろ姿を見てたら、俯いてどんどん早足になって……泣いてるような気がしたんだ」

「……ほっといてくれれば良かったのに」

「そうはいかないよ。あなたは俺を助けてくれた人なんだから。だから、ね。顔をあげて?」

私がゆっくりと顔を上げると、温かい彼の手が私の涙で濡れた頬に触れた。

そして、その手で私の頬を優しく包み込んだまま、

「最後は笑って別れたいじゃん?」

と言った。
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