三度目のキスをしたらサヨナラ
彼を見ると、その目にはうっすらと涙が浮かんでいた。

「……なんで、あなたまで泣いてるの?」

「もらい泣き半分、思いだし泣き半分」

そう言った途端、彼の目にまた涙があふれた。

ぎゅっと目を瞑ると、その綺麗な顔は涙で濡れていく。

「泣き虫……」

私は手を伸ばして、彼の涙を自分の指でぬぐってあげた。


……その後は、自然だった。

私たちはしばらく無言でお互い見つめ合っていただけだった。

それを、どちらから言い出したわけでもなかった。


彼は私の頬から手を放すと、その両手を床につき、ゆっくりと私の方に上半身を傾けてきた。

そして。

彼の顔が近づくのを感じて、私は、そっと目を閉じた。
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