牙龍 私を助けた不良 上
私には分かる。
全てを失ってから人は初めて気付くんだ。失ったものがどれだけ、自分の大切なものだったか。
「凜華ちゃん、どないしたんや?」
黙り込んだ私に、暁が心配そうに声を掛けてきた。危ない、危ない。
「何でもない」
暁に分かったと言って着替えを貰った。男用の小さい特功服とサラシ、Tシャツ。
Tシャツがあったことに、内心ホッとする。部屋の向かいにある仮眠室で着替えるように言われて移動する。
仮眠室には、キングサイズのふかふかベッドが2つ置かれていた。
その一つに着替えを置いて着替え始めた。紺色に白ラインのブレザー、赤いネクタイをとり、白ブラウス、水色スカートを脱ぐ。
最後に黒に黄色い星柄のニーハイを脱ぎ、黒いTシャツを着て特功服に腕を通した。