嘘カノ生活
 

「酒井は何も言わないの?間宮の事とか、今の状況」 
 
「あ…」
 

 
関谷が不思議に思うのも無理は無いと思った。

夕菜に言えば、"そんなのすぐ別れろ"だとか、"あたしが話つけに行く"だとか言い出して、かんかんに怒り出すはずで。

それは昔から関谷も知っていることだったから。
 
 
けれどそれは話していれば、の場合だ。
 


「…夕菜には言ってないよ。心配かけるし、これ以上頼ったらダメだと思うし。だから関谷にも言わなかった」

 
 
そう理由を話すと、関谷が急に不機嫌な顔になる。

そして拗ねた口から低い声を出した。


 
「…あのさあ、俺さっき言ったじゃん。お前が1人で抱え込んでるほうが心配だって。酒井も絶対そう思ってるだろうし」



関谷はさっきまで両足で真っ直ぐ立っていた。

それなのに今は片脚重心で立って、しかも前で腕まで組んでいる。
 
 
 
「で、でも…」
 
「でもへったくれもねえよ。柏木が言わないんだったら、明日俺が酒井に言うから」
 
 


不機嫌は頂点に達したようで、あたしの頭をぐしゃぐしゃとかき回す。

その後直ぐに「じゃあな」とだけ言って、関谷はあたしの前から去った。
 
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