届かぬ出ぬ声。

優雅SIDE
「こんばんわ~。」
毎日月の異名に通うのが日課になっていた。
だって、麗子を放っておけなかったから。
お酒に呑まれて。睦月さんが可哀想だった。
「優雅~。もう学校終わってたの~?早いねぇ~。」
麗子はもうほとんど家に帰ってないみたいだった。
相変わらず人嫌いが治って無くてしかもそれが
進行して居るみたいだった。
人間不信。対人恐怖症。
そんな一言で片付けてしまえることなのだけど、
大きくて。簡単には治らない物だった。
「麗子…。ちょっと二人っきりで話したいの。睦月さん部屋借りるね。」
「あぁ…。麗子を傷つけないで欲しい。」
睦月さんの最後の言葉…。意味は分かるよ。
分かるけど…。それは優しさじゃないんだよ?
このままだったら麗子は壊れていく。
分かるんだよ。私には…。昔の自分がそうだったから。
「麗子…二人きりで話そう?」
「うん?」
麗子は完璧アルコール中毒だ…。テンションがいつもより高くて
下がらなくなってる…。そんなの分かり切ってたはずなのに。
苦しくて辛くて涙が出て来た。

「なんで泣いてるの?私の方が泣きたいよ…。」
「ごめん。ごめんね。甘えて。」
泣いて泣いて。でも涙が止まらなかった。あなたが大切だから。
友達だからってあなたを助けられないのは嫌なの…。
「うざいんだってば。そういうの。何も分からない癖に。」
「分かるよ…。分かってるんだって!!大人に裏切られたことあるもん。大人から逃げていたから。だって大人なんて汚いって思ってたから。だけど、憐に会って分かったの。私は大人に助けを求めてたんだって。間違ってるよ…。裏切っちゃダメだよ…。」
泣きながら私は自然と語っていて周りが見えていなかった。
麗子は私を抱き締めていてくれて…。
「ごめんね。ごめんねぇぇぇぇぇ…。」
麗子は大泣きしていた。そして、最後に言った。
「もう戻れないの…。」

その言葉の意味を私は理解していた。
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