童顔教師が居候。
…ついに壁まで追い込まれてしまった私は、警戒のためキッと鰯を睨んだ。
鰯は壁に両手を着き、私を逃がさない。
「見てたよ。俺のこと。」
見上げるくらい背が高い鰯。
垂れ下がる前髪には少し水滴が付いていて、地面にポタッと落ちる。
この暑い英語準備室だもん。汗かくのは分かる。けど・・・
それが妙に色っぽくて、大人の妖艶な香りがこの部屋いっぱいに広がってる。
そうか。これが大人の、香り。
そこで彼がクスッと笑った。
「…ほら。見てんじゃん、雀。」
はっ!と我に変えると、顔が一気に熱くなる。
湯気でもでちゃいそうなくらい!
もう隠し通せない…どどどどうしよう…
「あの、…そのっ今のはっ」
あたふたする私を見降ろし、「ふっ」と鼻で笑う。
ちらっと彼を見ると、優しくてどこか懐かしい笑顔。
私、この人と前…会ったことがある…?