猫かぶりな男とクールな女
別に30歳になるのはなんてことない事だと思っていたのに…。
周りの言動でこんなにも気負いしてしまう自分が情けなく感じてしまう。
「俺…変わってないですか? 大学の頃から」
「…うーん。変わってないって言えば変わってないかなぁ。
でもまぁ、変わる事ばかりがいいとは限らないっしょ。」
「…これでも、社会に揉まれてきたつもりだったんですけどね。」
苦笑いしながら肩を竦める。
話が深くなるに連れて、飲むピッチが徐々に上がっていく。
「……蒼介君はさー。
上手だったじゃない。その場その場をやり過ごすのが。
悪く言えば猫かぶりなんだけど……
周りに比べて大人だったんだよ、昔から。
あ、すみません…ビール2つ追加で。」
「褒められてるととっていいです?それ。」
「どうぞご自由に。」
遥は笑いながらビールを受け取った。