One Day~君を見つけたその後は~
だけど、その言葉にもヤマタロは驚かなかった。

それどころか、小さくため息をつくと、

「やっぱりその件か」

ってプールの壁にもたれかかり、腕を組んで私のほうを見る。


それはいつものまんまのヤマタロだった。


「……他にないでしょ、私がヤマタロを呼び出す理由なんて」

「それは残念。……で、あいつは?」

「全然気付いてない。深月ってば、信じられないくらい鈍いんだから」

「……だろうな」

ヤマタロは深月の顔でも思い出したのか、クスリと笑みを零した。


「ねえ。この事、陽人は知らないんだよね?」

「当たり前だろ。陽人に教えたら、その日のうちに深月にばれるって」

「それもそうだよね……」


陽人がこのことを知ったら、顔を真っ赤にして大騒ぎしそうだ。


陽人と深月って、ホントに似た者同士。
隠し事のできない純粋な二人だもんね。

いやいや、純粋って言うか単純って言うか、ただのおバカって言うのかもしれないけど。


可哀想だけど、しばらくの間、陽人にはこのことを黙っていよう。

だって、やっぱり深月には、“オレ”の正体を自力で見つけ出して欲しいから……。


< 31 / 179 >

この作品をシェア

pagetop