貴女は僕の運命の人ではありませんでした
幸せな時間

“大人の修学旅行”・・・


京都には小学生の頃の修学旅行以来行っていなくて。


当時は寺とか見て一体何が楽しいんだ・・なんて思っていたけど。


この歳にもなると、なんだかとても“いとおかし”がよくわかるようになっていた。





まず最初に嵐山に。


梅雨時期にもかかわらず、観光客はたくさんいて。


人の流れに逆らわないように、はぐれないように・・・しっかりとトモの手をとった。


それでもトモが人の流れに流されそうになるから、グイっと腰に手を回して引き寄せる。





「...はぐれたらダメだよ?」



そう声を掛けると、「...うん。」とトモも俺にくっついてくる。




・・・ちょっと。


俺の彼女、マジ可愛いんすけど。






・・・そして、やっと渡月橋を渡ろう・・・とした時。



トモが、俺の服の袖をチョイチョイと引っ張った。




「...ん?どした?」




「渡月橋ってさ...カップルで渡る時に振り返っちゃいけないってジンクスあるの知ってる??」




「そうなの?別れる..とか?」




「そうそう。だから...気をつけようね」




・・・トモってば。


ドコまでイチイチ可愛いんだよ・・・





「...トモ。」




「なに?」




「そういうのめちゃくちゃ可愛いんだけど。振り返らないようにしようねって事でしょ?

そんなに俺の事好きなんか...そうかそうか...そんなに俺の事を...」




「...なんなら無理矢理にでも一緒に振り返るけど?」




「はっ?!バ、バカじゃない?!振り返る訳ないじゃん!!」




「プププっ!!貴司、めちゃ面白い!!」




クスクス笑うトモに俺も釣られて笑う。


・・・あぁ。こういうのホント幸せ。


もし、橋を渡ってる最中に振り返ったとしても、俺たちなら絶対に別れたりしないって自信がある。


ジンクスなんかに負けない自信がある。




・・・でも。念のため・・・前しか見ないけど。

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