Maria ~私の心を貴方に捧ぐ~
「来週はお宮参りに行くんです」

『成瀬君と行くの?』

「はい、お土産買ってきますね」

『それは楽しみだな』



何をお願いするの?と聞かれないことが少し切なく、そして悲しく感じる。


こんな病人に聞けば返ってくる答えなんて決まっているけど。



「昴先生はお休み取れないんですか?」

『僕はまだ分からないんだ。まだ研修生でたくさん学ばなければいけないことがあるからね』

「それでも、心身ともに休ませてあげることは大事ですよ」

『そうだね』



私の言葉に笑って答えながら、点滴を止め針を外す昴先生。


先生や看護師さんも休みたいだろうけど、患者さんの病気は待ってくれないもんね…。



『僕の分まで楽しんできてね』

「はい」

『また来るよ』



そう言うと昴先生は空の点滴を持って病室を出て行ってしまった。


静かになった病室で、私は目を瞑り夢の中へと落ちていった。





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