Maria ~私の心を貴方に捧ぐ~
まりあはゆっくりと息を吸うと、その息をゆっくりと吐き出した。


そして、鋭い顔つきから申し訳なさそうな柔らかい表情へと変わった。



「ごめん、京ちゃん……」

『なんで謝んだよ』

「病気にかかってる人にしかわからない苦悩や苦痛ってあるのに、勝手な事を言っちゃったから。京ちゃんだって簡単にそんな事口にしたわけじゃないのに……」

『謝んなくていい。まりあの言うとおり、俺は勝手に自分の命に期限付けようとしてんだと思う』



つい最近まで元気だった体にまた異常が出て、まともな生活が出来なくなった。


術後はやりたい放題いだったからか、よく分からない絶望感に襲われて、俺はそれから逃げたがってる。



「この病院でいろんな患者やその親族の人たちを見てきた。患者は辛い治療を受けても生存確率が低いと緩和治療をしたいと思う。親族はどんな姿でもいいから生きててほしいと願う…自分たちがどれだけ病人に辛いことを強いているのかも、エゴを押し付けているのかもよく理解はしているのに……」

『患者の思いも親族の思いも別に悪い事じゃない。お互い辛い状況なのに病気に対する判断は余計辛い思いを強いられる…双方とも……』



難病や難しい治療になればなるほど、100%お互いが納得し理解できる解決策を見出すことは難しい。






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