Maria ~私の心を貴方に捧ぐ~
ソファーの背にもたれていたまりあは、姿勢を正すと体ごと俺の方へ向けた。


そしてまりあは俺の膝の上に両手を重ね、添えるように置いた。



「私も自分のエゴを押し付けるなら、京ちゃんには何をしてでも生きてほしいし、移植の順番が回ってくるのを諦めずに待っててほしい」

『……まりあ』

「順番が回ってくるまで今の心臓が待っててくれるか分からないし、その恐怖がどれだけの大きさで京ちゃんの心にのしかかってるのかも分からない。でもッッ…まだ、望みがあるなら私のためにッッ諦めないでよッッ………」



膝の上に置かれた手は震えていて、まりあの目からは涙が溢れ、頬を伝ってどんどん零れ落ちている。


まりあの手の上から自分の左手を重ね、右手で涙を拭った。


拭っても拭っても溢れる涙。



『せっかく一つ約束果たしたのに、また約束が増えちまうな』

「京ッッちゃん…?」

『約束するよ…まりあの為に、諦めねぇってよ』




相変わらず涙は流れていたけど、そのまままりあは愛らしい笑顔を見せた。


どうやら賭けは俺の負けみてぇだ………俺は、まりあが好きだ。


この笑顔を失わない為にも、傍で見続ける為にも、俺は必ず移植を受けてみせる。


そして、無事に終わったらこの気持ちをまりあに素直に正直に伝えよう。


どんな結果になろうと。






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