Maria ~私の心を貴方に捧ぐ~
まりあは俺の大好きな笑顔のまま「私はどんな時でも京ちゃんの傍にいるからね」と言って部屋を静かに出て行った。


ドアが閉まり、まりあの姿が完全に見えなくなると、俺の目からは一粒の涙が流れ落ちた。


涙を流したのは何年ぶりだろうか…。


急に態度の悪くなった俺に戸惑った様子のまりあの顔、泣き顔、笑顔…今まで見せてくれたまりあの顔が俺の頭の中で映像の様に流れる。


昴先生とはただの仲が良い先生のうちの1人なのかもしれない。


でも、俺の知らないところでまりあが他の男と楽しそうに笑い合っているかと思うと、病気に対する焦りと恐怖で自分が自分でなくなるような気がして怖くなった。



『俺は…弱い………』



いつ死ぬかも分からない俺じゃなくて、まりあは昴先生とやらと上手くいったほうがいいのかもしれない。


いつ死ぬか分からない奴に想われても、まりあにとってはきっと迷惑だ……。


普段ならこんな後ろ向きな考えが浮かんでも、鼻で笑って頭の中から削除していた。


でも、情けないことにそれが出来なかった…。



『うッッ…ンッ………』



急に心臓が苦しくなり、俺は急いでナースコールを押した。


早々に、まりあを傷つけた天罰が下ったみてぇだ………。





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