雪解けの頃に

2】胸騒ぎ

 理花は部屋に入り、後ろ手で扉を閉める。

「私が帰ってくる日も時間も知ってるんだから、わざわざ手紙なんて送らないで電話をかけてくればいいのに。

 まったく、もう」
 
 ボスン、と音を立ててベッドに腰をかけた。

「『電話がかけられなくてごめんなさい。気まずいから手紙にしました』ってことでも書いてあるのかなぁ」

 わざわざ大きな声を出しては、いちいち独り言を言う理花。

 不安を取り除こうとする時の、理花の無意識の行動だった。


 何を感じ取ってのことか、胸騒ぎは収まる様子を見せない。




 理花は正直迷っていた―――手紙を読むことを。

 母親からこの手紙を受け取ってから、胸の奥がチリチリと焼けるような、不快な感じが続いているのだ。



「……まさかね」

 理花はふっ、と笑って自分の馬鹿げた妄想を振り払った。

「私ったら疲れているのかしら。
 
 変な事ばかり思い浮かべちゃって……」

 
 馬鹿馬鹿しいと思いながらも、理花の独り言は収まることはなかった。
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