雪解けの頃に

5】白い悪魔

『去る2月19日。雄一は亡くなりました』


「うそ……でしょ?」

 重く、苦しい空気が一気に理花へとのしかかる。
 
 今まで出来る限りこらえていた理花の涙腺が、限界を超えた。
 洪水のようにこぼれだす涙。


「うそよね……?」

 信じられない。

 いや、信じたくない。


 だけど、何度読み返してみても、文章は変わらない。
 残酷な事実が記されているだけ。


「そんな……」

―――こんな急に?!
 




 雄一は急性白血病だった。
 
 付き合い始めて2年目の秋―――雄一が20歳の頃、授業中に突然倒れたのだ。
 
 白血病にはいくつかの型があり、雄一の場合は根気よく治療を続ければ症状も抑えられ、問題なく日常生活が送れるという比較的症状の軽い方だった。
 
 春と秋に治療のため、約2週間の入院が必要だったが、それ以外はこれまでと何の変わりもなく過ごせていたのである。

「ど……して?」

―――私が出張に旅立つ朝、見送ってくれた彼はあんなに元気そうだったのに!?
 


 目の前がグルグルと渦を巻き、気を失いそうだった。
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