雪解けの頃に
 何かをしていないと倒れてしまいそうなほど、悲しみが束になって襲い掛かってくる。
 
 理花の心が引き裂かれ、悲鳴を上げている。


「い、いや……よ。

 こんなの、いやぁ……」



 何もかも放り出して、この場から逃げ去ってしまいたい。

 こんな手紙など破り捨ててしまいたい。


 しかし、今の理花には目の前の手紙を読むことしか出来なかった―――つらいと分かっていても。


「うっ……、くぅぅ……」

 下唇を噛み締めて、必死に手紙を見据える。

 びっしりと文字で埋め尽くされた5枚近い便箋を読み進めてゆく。



『理花さんが海外に発ってから、程なくしていつものように入院をしたのです。

 その際に雄一の担当医から“このところの治療の効果があまり現れておらず、予想以上に状態が良くない。

 もしかしたら先は長くないかもしれない”と告げられました。

 話によると、本人の体力がかなり落ちていたこと。

 それによって抗がん剤に耐え切れず、悪影響が出てしまったのではないか、ということでした。
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