雪解けの頃に

6】マフラー

 去年の12月25日。
 
 理花の所に雄一からのプレゼントが届いた―――深みのある落ち着いた赤い色の、とても手触りの良いマフラーだった。

 冬は日本の寒さとは比べ物にならないほど冷え込むニューヨーク。

 防寒対策に理花はすでに何本ものマフラーを用意していた―――コートに合わせて、色とりどりのマフラーは5本。
 

 その中に赤いマフラーはなかった。

 自分では“赤は似合わない”と思っていたから。

 

 同封されていたカードには

『マフラーなんていくつも持っているだろうけど、理花にすごく似合いそうだったから思わず買ったんだ』

 と書いてあった。
 
 理花はさっそく鏡の前で、もらったマフラーを巻いてみる。


「うん、良い感じ。

 ……なんだ。私、赤も似合うじゃない」

 華やかさはあるけれど、下品な派手さはない。

 日本人特有の肌の色にぴったりと合って、理花の顔立ちを引き立てる。
 
 なんだか自分が数段美人になったようにすら思えた。

 
 雄一が言う通り、彼がくれたマフラーは理花が持っているどのマフラーよりも似合っていた。
< 27 / 43 >

この作品をシェア

pagetop