雪解けの頃に
3章 急変

1】誕生日プレゼント

『雄一の様態が急変したのは、年が明けてまもなくでした。
 
 病院に戻ってから一週間ほどして、昏睡状態に陥ることが頻繁になり、5日に一度だったものが3日に一度、そして1日おきと。
 
 体力も抵抗力もがくんと落ちてしまって。

 ベッドの上で眠り続ける時間が長くなり、2月に入ると1日のうち数時間ほどしか目を開けることがなくなりました

 理花さんからかかってくる電話にも出られないことが、度々あったかと思います。』



 涙がどうしようもないほど溢れてくる。


―――なかなか電話をしてもつながらなかったのは、こういうことだったのね。
 
 
 1月の中ごろを過ぎた辺りからあまりに電話に出てくれない雄一に腹を立てて、少し強い口調で文句を言ったことがある。
 
 すると、“風邪を引いたみたいなんだ。自分がこんな病気のせいでなかなか治らなくってさ。

 もし、この先風邪をこじらせちゃったら今のように電話に出られないかもしれない”と言われた。

―――あれは私が気を回さないように言ったウソだったのね。 


 手紙の文字がぼやけて読めない。

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