雪解けの頃に
2章 手紙

1】彼からの手紙

「何?」
 
 理花が階段の途中でくるりと振り返る。


「これ、雄一さんからの手紙よ。

 おととい届いたの」
 
 母はエプロンのポケットから白い封筒を取り出した。


「手紙?」
 
 不思議そうな顔をする理花。


「変なの。電話のほうが早く連絡つくのに」
 
 首をかしげながらも手を伸ばして受け取った。


「あ……、誕生日に電話のひとつもしてこなかったから、謝りの手紙かな」


「そうなの?」 
 
 階上の娘を見上げる母。


「うん。プレゼントは届いたんだけどね。

 いつもなら必ず後からでも電話してくれるんだけどさぁ」
 
 崩れかけた前髪を指で掬い上げる理花。


「あなたからはかけなかったの?」


「かけたわ。でも、携帯はぜんぜんつながらないし。
 
 家にかけても留守電で、まったく連絡取れないの」
  

 理花は口先を少し尖らせて、ふてくされる表情を見せる。
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