天体観測
家の中はむせ返るほど暑かった。ただ暑いだけなら我慢は出来る。けれど今の精神状態を考慮したら、我慢出来る方が異常だろう。

僕はたまらず居間のクーラーを付けて、自分の部屋に戻り、ポロシャツとジーンズ姿になってダイニングに向かった。

ダイニングでは父さんが机に足を投げ出して、煙草を吸っている。僕は冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出して、父さんの前に座った。

「聞きたいことがあるんだ」

「さっきも言ってたな。真澄なら前橋さんについていってる」

「知ってるよ」

「じゃあ、なんだ」

「僕に第一発見者……通報人を誰か教えてほしい」

「無理に決まっているだろう」

父さんは僕を睨み付ける。目でこれ以上、俺に関わらせないでくれと脅しをかけている。僕は怯むことなく言った。

「これは隆弘のためでも恵美のためでもない。僕が満足するためにやるんだ。迷惑はかけない。頼りにもしない。これが最後だ。父さん、教えてくれ」

「自己満足で終わらしていい問題じゃない。これはもう立派な殺人事件だ」

「そんなこと言っても無駄だよ。殺人事件だとかそんなことは関係ないんだ。自己満足でいいじゃないか。探偵みたいなものさ」
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