天体観測
結局、僕らが駅に戻ることはなかった。偶然なのか、必然なのか、村岡と雨宮が、空き地の前を通ったのだ。恵美が二人の名前を叫び、関係ない人たちだけがこちらを向く。当の二人はこちらに気付きもしなかった。僕は、村岡の携帯に電話して、反応すると同時に、恵美と共に人の流れに背を向けた。

「もしもし」

「どうした?」

「お前と雨宮がそういう関係だとは思わなかったな」

「は?何言ってんねん。それよりも、早く来いよ。一人で駅前で待つのもつらいもんやぞ」

「嘘はいいよ。二人で仲良く歩いてるじゃないか」

村岡が携帯を耳から離し、辺りを見渡す。けれど、僕らを見つけることは出来ない。

「何処にいるんや?」

「真後ろ」

僕は身体を捻じって、人ごみの方を見る。村岡が僕らを見つけようと必死で後ろを探している。当然、僕らはそこにはいない。笑いがこみ上げるのを、我慢して言った。

「ほら、ここだよ」

「何処やねん」

「おかしいな。俺たちからは二人がよく見えるのに」

このとき、僕らはもう人ごみの方を向いていた。恵美が僕の隣で笑っているのが、電話越しに聞こえたのか、村岡が空き地の方に目を向けた。それを見て、恵美が二人の方に走り出した。

「やあ。村岡くん」

「何やってんねん。そんな所で」

「夏祭りそのものに、絶望しようとしていたところだよ」

「何で?」

「夏祭りがなかったら、ここの寂しさが浮き彫りになることはなかった」

「そうか?いい場所やと思うけどな」

「ああ。最適だよ」

村岡は何も返してはこなかった。肯定も、否定も、疑問すらも。だから、僕は言わなければいけない。過去への訣別を、未来へのを邂逅を。

「終わりには相応しい場所だ」

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