天体観測
朝食に使った食器を片付けて、少しの間、庭を眺めていた。

庭の緑は太陽に照らされて眩しい。こういう陽気には外出は避けたいものだ。

でも、そうは言ってられない。時間は八時半。そろそろ恵美たちが来る時間だ。

僕は自分の部屋に向かい、お気に入りのTシャツとジーンズに着替えて、またダイニングに戻ったとき、チャイムが鳴った。

僕は玄関へ行き、ドアを開けた。立っていたのは村岡と、雨宮だった。

「よっ。足立。お久しぶりやな」

「足立くん。おはよう」

村岡と雨宮と会うのは終業式以来だった。つまり一月以上会っていなかったことになる。

「おはよう。村岡、雨宮。恵美はどうしたの」

「前橋なら少し遅れるって連絡きたで。お前んとこにはきてへんのか?」

「ああ」

僕には恵美が連絡しなかった理由が、一瞬でわかった。それは連絡する理由がないからだ。村岡か雨宮に連絡すればことは足りる。難しい話じゃない。結局、恵美は隆弘の所に行った。そういうことだ。

「どうすんの?」

「どうするもこうするも家にいなくちゃいけないだろ」

「そういえば……私、足立くんの家、入んの初めてかも……」

「俺も俺も」

「ようこそいらっしゃいました」

僕らは、三年連続同じクラスなっているが、学校の中で話すくらいで、特別親しくした覚えはない。それは僕のせいではなく、二人のせいなのだ。

村岡はどこかのプロサッカーチームのユースに所属していて、大阪選抜に選ばれたほどの強者だ。雨宮は実家が豆腐屋を経営していることと、その容姿の良さから「豆腐小町」なんて呼ばれている。

そんな二人は当然、学校内外で人気があり、僕なんかがつけいる隙なんてなかったわけだ。
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