天体観測
「じゃあ、あれか。俺だけ高卒かよ」

「お前にはサッカーがあるだろ。推薦もらえるんじゃないのか?」

村岡は嬉しそうな顔をして、立ち上がった。

「足立……よくぞ聞いてくれた。俺、トップに昇格してん。来年からプロや」  

僕と顔を上げた雨宮は、驚きのあまり、お互いの顔を見たまま固まってしまった。その後は、まるで予め決まっていたかのような沈黙が流れた。

そのとき、恵美がチャイムを押すことなく家に入ってきた。普段なら怒るところだが、今は感謝の言葉しか思い浮かばない。

「みんなごめん。ちょっと用事ができて。ん?どうしたん?」

「村岡がプロになるんだってさ」

恵美も僕らと同じように驚いた様子だったが、僕らと違って、固まることはなかった。

「すごいやん。村岡くん。よおし。今日は村岡くんのお祝いも兼ねてぱーっとやろう。ぱーっとね。さあ、行くぞ、野郎ども。」

恵美はそう言うと、右手を突き上げて外に出ていった。

「なあ、足立?」

「なに」

「プライベートの前橋って、いつもあんなん?」

「いつもより、ほんの少しだけ凄いよ」と言うと、何故か雨宮がクスクスと笑いだし、恵美のところに向かった。

僕と村岡は、さっきの僕と雨宮のように顔を見合った。
< 40 / 206 >

この作品をシェア

pagetop