天体観測
母さんは十一時過ぎに帰ってきた。僕はもう食事を済まし、風呂にも入って、ダイニングで椅子に腰掛けて、ミネラルウォーターを飲んでいる。

「おかえり」と、言った僕は母さんを椅子に座るように促した。

「どうしたのよ?」

「どうしたと思う?」

「質問を質問で返さないで」

「父さんから聞いた」

「何を?」と言った母さんの顔は少し曇っている。

「母さんのことを」

「だからなんなの?」

「元の鞘に戻ったらしいね」

「司……」と言って、母さんは煙草を取り出し、火を点けた。

「最近よく煙草を吸うようになったね。家では全然吸ってなかったのに」

「そうね。何でかしら」

「父さんが僕らの前に現われたからじゃないのかな?今まではあからさまに会ったりしなかったから」

「そうかもしれないわね」と言って母さんは煙をはいた。

「怒ってる?なんて母親だと呆れてる?」

「いいや」

「本当に?」

「うん」

「何で?普通なら家出ものだと思うけど」

「他にもっと複雑な問題があるから、頭が少し変になっているのかもしれない」

「楽しそうね」

「むしろ苦しいよ」

「そうは見えないわ」

「これでも必死に悩んでる」

「そう。何か食べたの?」

「炒飯を食べた」

「それで足りるの?」

「正直、朝まで保ちそうにない」

「わかった。じゃあ今度は私がお茶漬け作ってあげるわ」と、言って母さんはキッチンに立った。

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