懐古の街

ごちそうして貰う立場でありながらなにもせずに見ているだけの美猫に呆れながらも、付け合わせやみそ汁を作り始めている皐月さんの横に行って俺も、揚げ出し豆腐にする為に水切りをして置いてある豆腐を切って衣をつけて、おかずを作るのを手伝った。

中華鍋に油を入れて火にかけて、油を充分に温めて熱してから、衣をつけた豆腐を滑り落とすようにゆっくりと入れて揚げていった。

皐月さんは、揚げ出し豆腐にかけるあんかけを作りながら、みそ汁の具合を確かめ、手際よく複数の料理を仕上げていく。

…皐月さんはきっといいお嫁さんや母親になれるだろうな…そんな事をぼんやりと考えながら、揚げ物をしていたせいで、俺は揚げ出し豆腐を数枚焦がしてしまっていた。
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