懐古の街
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そして、それから、30数年の年月が過ぎ去り彼―――


仲神 颯太。

私の息子が、この故郷に十数年以上ぶりに帰郷するその時を迎え古びたアパートの一室で、彼女、津雲 皐月 と出会い、心を通わせるお話はまた別のお話。

30年ごしに、あの時少年だった私がした短冊への願いは、叶えられたのだ。

彼女にとっての彦星が何時までも彼女の側にいて、彼女を孤独から、開放してあげられる日が―――

いつか、彼女は彼女にとって大切な人とこの星空を見上げて、微笑み会えたら、手を繋いで歩いていけたらいいと願った―――

私が、彼女を忘れても、私の意思を継いだ息子が彼女を支えて生きてくれるだろう。

少年のような心を持ったままで大人になった青年と、忘却と孤独を背負った彼女が出会うその日まで……

星に願いを―――
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