一人睨めっこ
『水面に写った自分と睨めっこする。これだけじゃ何も起きない』

「だろうな」

『重要なのは、月の光だ』

 それは何となく感付いていた。
 真奈美の話にもあったし。

『あっ、あのさ!!』

 淳が突然口を開いた。

『気になってたんだけど……その、呪文みたいなの書いた紙はどんな役目があるの?』

 淳は、先程水に濡らした紙を指差して言った。

『んー……雰囲気出るから』

「はい??」

 雰囲気??

『呪文みたいなの書いたりすると、恐怖心が湧いてくるじゃん? それが狙い』

 ……それだけかよ。


『――――本当に?』

 真奈美が訝しげに言った。
 水面に写る顔は、真奈美をじっと見た。

『へぇ、やるなぁ真奈美ちゃん』

 ……小テストの事思い出しちまった。

『気安く呼ぶな』

 あれ、真奈美さんキレ気味?

『おー、怖い怖い』

 もう一人の俺は、全く怖くなさそうに言った。
 
『じゃあ言うけどさ、あの呪文によって俺の魂を水に移動させてるんだよっ』

「え……?」
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