一人睨めっこ

九節 理解

『お前と俺の魂は、一つにくっついていた。でもお前が一人睨めっこをやったから、俺の魂は無理矢理引き剥がされてこの水の中に――』

 うわ、なんか俺悪者だなっ。
 無理矢理ってさ……。

『だから俺はお前と会話が出来るようになった。魂が離れたからな』

「ふ、ふーん……」

『一人睨めっこが終わり、再び俺とお前の魂は一つに……ならなかった』

「え? 何で!?」

『さっき言っただろ、無理矢理引き剥がされたって』

「ああ……」

 俺は静かに頷いた。

『例えばさ、接着剤で板と板をくっつけたとする。それを剥がしたら、もう一度くっつくと思うか?』

 接着剤で……。
 俺は想像した。

「接着剤はがしたら、接着面がざらざらになるから……くっつかないかな」

 技術の時間にそんな経験が何度かある。
 いや、何度も……。

『正確。だから俺の魂はお前の体に戻っても1つにならなくて、別々のままだった』

「へえ」

『へえって何だよ』

 もう一人の俺は、俺のリアクションの薄さに顔をしかめた。

「だって別々になっただけじゃん」

 へえ、としか言い様が無い。

『はぁ……でもこれを聞いたら、そんな呑気な事言ってられないぞ?』

 “これ”?
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