一人睨めっこ
 俺、体動かせられるじゃん。
 声、出せるじゃん。
 もう一人の俺の声も聞こえないじゃん。

「もう一人の俺は――消えた?」

 だったら最高だ。
 いや、もしかしたら元々もう一人の俺なんか居なかったのではないか?
 俺はただ夢を見ていただけではないか?

 考えても考えても俺の脳から答えは出ない。

「でもまぁ、消えたんだ、よな……?」




『消えてはないと思うよ』

「!!!?」

 気付くと俺の横には、見知らぬ男。

「い、いつからそこに……!?」

『君が、もう一人の俺はなんとかって言ってる時かな!』

 えー、全然気付かなかった……。

「――つか、誰?」

『知らないの!?』

「知る訳ないだろ」

『僕はね――』


 バンッ!!
 その時、部屋のドアが開いた。

『兄ちゃん!!』

『どうしたの淳ー?』

『勝手に俺の部屋入んなよ!!』

『いいじゃん、兄弟なんだしさ〜』


「…………あのぉ」

『あ、紹介が遅れましたねっ』

 まさかこの男

『宮下駿、高2で淳のお兄ちゃんですっ!』

 淳の兄だったなんて。
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