一人睨めっこ
『真琴!!?』

(くれくれくれくれくれ)

「いっ、嫌だ!!!」

 俺は耳を塞ぎ必死に拒否するが、嫌でも頭の中に声が響いてくる。

『藤崎!!』

 葛西が部屋に入ってきた。

 そして俺と淳を交互に見て、事態を察したように言った。

『やっぱり……これじゃ防ぎきれなかったみたいね』

 葛西はペンダントを触った。

(体が欲しいんだよ……)

「――体は、渡さない」

 俺は言った。

『絶対に渡すなよ。意識を取られるな』

 いつの間にか優兄と駿兄も部屋に入ってきていた。

「うん……」

 俺は頷いた。

 だけど……それって結構きついかも。
 もう一人の俺は、俺の意識と体を離そうと力を込めているようだ。

 駄目だ。駄目だ。駄目だ!

 ちょっと気を抜くと、体を乗っ取られそうだ。

 次乗っ取られたら、もう返してもらえないかもしれない。

(くれよぉー……)

「っるさい! 消えろ!!」

 俺はもう一人の俺に向かって叫んだ。
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