銀盤少年

滑りで伝えるというのが、なんともケンちゃんらしい回答だ。


目は口ほどに物を言う。いや、この場合は“滑りは口ほどに物を言う”の方が正しいか。


口下手で天邪鬼で意外と臆病なケンちゃんのこと。


好都合と嗚呼言ってはいるけれど、いざ本人を目の前にしたら動揺して口籠ってしまうだろう。


トラウマとはそういうもの。なかなか拭い去れないから、トラウマ。


だから滑りで、プログラムで伝えようとしている。


自分の気持ちを、想いを、自身の滑りに乗せて仁君に。


だからこの数カ月、必死で練習に励んでいたんだろう。


自分自身のために。そして仁君のために。


……なんだかな。拳で語りあう不良漫画じゃないんだから、手紙やメールというもっと簡単に伝えられる手段がいくらでもあるっていうのに。


不器用すぎ。優しすぎ。


もっとわかり易くいうなら大馬鹿野郎。
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