銀盤少年

でも、少しでも前向きになれたのなら、それはそれで大きな前進。


それに仁君になら、口よりもよっぽどケンちゃんの想いを感じることが出来るはず。


根拠のない自信だけど、きっと大丈夫。


「正直驚いたよ。ケンちゃんの口からそんな言葉が出てくるなんて。一体誰に感化されたのかなぁ?」


「……うっせぇ」


右手を後頭部に回して掻き始めるケンちゃん。


まあ聞かずとも誰かは容易に想像出来る。


お人よしの直球馬鹿と肩を並べるには、一歩踏み出すしかないのだから。


「よし、さっさと振り付け確認をしよっか。ちょっと気になる所もあるし」


「おぅ」


(……ありがとな)


心の奥に眠る言葉は、小さな呟きとなって空に消え、俺の耳には届かなかった。
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