銀盤少年
だからサブリンクの利用者はほとんどおらず、リンクを借りるのにも金がかかるので、ちゃっかりスピスケ部の練習時に紛れこんでサブリンクを使っている。
部費が少ないうちにとって、スピスケ部が全額負担してくれるから非常にありがたい。顧問が同じという唯一の利点だ。
俺とヒロと草太。いつもは幽霊部員の優希に、問題児の狼谷の五人がサブリンクに集まった。
いつにもまして、空気が冷たく感じるのは気のせいじゃない。
狼谷と面と向かって再会するのは、奴が三位になった全日本ジュニア以来だ。
「久しぶり」と声をかえたが、狼谷は華麗にスルーして一言も喋らなかった。
昔からこういう奴だったので気にしない。今は完全な敵同士なわけだし。
狼谷は自分のスケート靴を持参していて、準備運動を済ませると何食わぬ顔でリンクに上がった。
一般開放されているリンクで貸し出している靴と、選手が使用している靴は見た目は同じだけど全く違う。
貸し出しの靴でジャンプを跳ぼうとしたら、ブレードは粉砕して使い物にならないだろう。
横目で狼谷の靴をチェックする。