銀盤少年

「あら、ミューちゃん帰ってきたのね」


朝の情報番組を見ながらトーストを齧っていたら、コーヒーを淹れていた母さんがポツリと呟いた。


低血圧で頭が未だに睡眠状態の俺は、ノロノロと朝食を口にしながらテレビへと視線を移した。


スポーツコーナーのトップは、先日行われた世界フィギュアスケート選手権の金メダリスト、安西美優の帰国を知らせる物だった。


世界選手権の後そのまま開催地ロシアでのアイスショーに参加していたから、帰国が一人だけ伸びていたのだ。


すげぇなー。五輪が終わって一年経つけど、未だに技術を保って成績を残し、女子フィギュア界のトップに立ち続けてんだから。


ああいうのを“天才”って言うのかねぇ。いやはや凄すぎ。


などとそんなことを思いながら朝食を完食すると、テレビ画面の左端にある数字が“7:30”に変わった。


「そろそろ行かないと、新学期早々遅刻するわよ」


「うぃーすっ」

< 4 / 518 >

この作品をシェア

pagetop