銀盤少年
「あら、ミューちゃん帰ってきたのね」
朝の情報番組を見ながらトーストを齧っていたら、コーヒーを淹れていた母さんがポツリと呟いた。
低血圧で頭が未だに睡眠状態の俺は、ノロノロと朝食を口にしながらテレビへと視線を移した。
スポーツコーナーのトップは、先日行われた世界フィギュアスケート選手権の金メダリスト、安西美優の帰国を知らせる物だった。
世界選手権の後そのまま開催地ロシアでのアイスショーに参加していたから、帰国が一人だけ伸びていたのだ。
すげぇなー。五輪が終わって一年経つけど、未だに技術を保って成績を残し、女子フィギュア界のトップに立ち続けてんだから。
ああいうのを“天才”って言うのかねぇ。いやはや凄すぎ。
などとそんなことを思いながら朝食を完食すると、テレビ画面の左端にある数字が“7:30”に変わった。
「そろそろ行かないと、新学期早々遅刻するわよ」
「うぃーすっ」