銀盤少年

秘密兵器の使用許可も出た。調子もすこぶる良好。


滑走順はちょっと気になるけど、逆に優勝候補の二人が先に滑った方が、滑り終わった後ドキドキハラハラしなくて済むから逆に良いかもしれない……てか、しれないと思うことにする。


「一樹、草太」


先生が名前を呼ぶ。


「どんな結果になったとしても、怪我だけはするなよ」


試合の度に耳にする先生の口癖。


だけど今回は言葉に重みがあるというか、特に俺に向けられたような気がして心がざわついた。


アレを跳ばせたくないのが先生の本音なのだろう。


危険な大技。練習でもまともに成功していないのだから、跳ばせたくない気持ちもわかる。


でも、ごめん。


どうしても跳びたいんだよね。危険だとわかっててもさ。