ホストに恋する方法。

「いらっしゃ…あ、カレンちゃん」
「こんばんは」
馴染みのバーテンさん(タクさん)に挨拶をしてあたしはカウンターに座る。
すかさず灰皿とおしぼりが差し出される。
「ご注文は?」
「ウーロン茶でいいわ」
「おや、珍しい」
「今日は飲みに来たんじゃないの。ただの人待ち」
「お客さん?」
「あ…タクさん。昨日さ、私誰と一緒に来たの?」
「ミカちゃんと、若い男の子二人と一緒だったよ」
 

なんだ。
ここでナンパされたって訳でもないのか。
 

「待ってるのはその男の子よ」
「へぇ?珍しいね」
「あたしだってたまには若い男の子と遊びたいのよ」
「あはは」


カラン


ドアが開いた。
 

「あ、カレン!」
にっこり笑いながら彼はあたしの横に腰を下ろす。
「ごめんね、わざわざ」
「いいんだ。家近いし」
 

確かに。
あたしが目を覚ましたのは彼の家だったけど、ここから10分ぐらいの場所だった。
羨ましい立地条件だ。
 

「仕事終わり?」
「うん。ごめんね」
「お疲れ様」
 

ふーん。
あたし、キャバ譲だって言ったんだ。
やっぱりまったく記憶がない。
 

「こんな遅くまで起きてるんだ?」
「うん。俺、今日オフだし」
「友達と遊んだりしてなかったの?」
「ちょうど別れて帰ったところ」
彼の髪はトップが短くて裾が長い。
…なんだかなぁ。
  

「あのさぁ。あたし昨日の記憶あんまりないんだけど…」
「うん?」
「君、名前なんていうの?」
「え…?」
 
彼は驚いたような表情を浮かべた。
む?
あたし聞いてたのかな?
それは失礼な事をした…
 

彼はあたしの掌に、指で文字を書いて見せた。
「……碧って書いてミドリって読む」 
「へぇ…」
ちょっとびっくり。
「珍しい名前だね」
「そう…だね」
 

彼の微笑みはなんかちょっと安心する。  

 
 



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