教科書を広げて


アーケードの一番右端にあるお目当てのお店を目指す。



「・・・三宅?」


途中で私の名前を呼ばれたが、聞き覚えのあるその声に無視を決め込む。

この世で一番嫌いな類(タグイ)の人間だ。



「おーい、シカト?」


「ぎゃははは、だっせぇ〜」



煩い、煩い・・・

店の前に着き、勢いよく引き戸を開け、閉めようと思ったが、八つ当たりはいけないね。



腹立たしい気持ちを抑え、恭(ウヤウヤ)しく引き戸を開け敷地に入った。

涼しい風がすぅっと外にながれてゆく。



ここに、奴らが来ることはない。



ゴツくて怖〜いおじさんが、この築○十年のボロボロ書店の店長なのだ。



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