神崎探偵事務所へようこそ!!


クラブ:Amabile(アマービレ)


そこはミキちゃんのお仕事場所。銀座の1等地に位置する高級クラブだ。六本木や歌舞伎町と違って、銀座のホステスは美しさだけでなく、知性と、品も必要とされる。


新聞を毎日5社以上読むのは当たり前。株価の動向に為替相場。ついでにバレエやオペラ、絵画に建築にと……毎日の勉強に余念がない。そういう知識と品格がなければ銀座でホステスなんてやっていけないのよ。……とミキちゃんは言っていた。


宮坂舞花さんも、Amabileで働いてた、ってことは美しくて賢い女性だったに違いない。


でも……なんで彼女が殺されたことと、私の身の危険が一括りにされてるんだろう……。



意味がわからなくて首を捻ると

「美優。まどろっこしいのは嫌いだからハッキリ言うよ?VENUS(ビーナス)。この言葉に覚えがあるだろう??」

お母さんはタバコに火をつけ、煙をくゆらせながらそんな言葉を口にする。



VENUS……
確か、クルセイドのジークが言ってたよね?Mariaに盗まれただか、なんだとか。


「前に遊園地でジークが言ってたヤツのこと??」

コクンとうなづき、そんな答えを返すと

「そう。クルセイドは未だにアタシが盗んだVENUSを血眼になって探してる。16年間はうまく誤魔化してこれだけど、どうやら連中もVENUSの在り処に気づきつつあるのかもしれない。」

そう言ってお母さんはニヤリと微笑む。


ーこ、こわっ!


その眼は獲物を狙う蛇のように狡猾で、残忍。我が母ながら、こんな眼ができるほどの迫力を備えた神崎律子というオンナが怖くなる。



んん??
でもさ??ちょっと待って。
お母さんのヘビの目におののいて、すっかり本題からズレてたけどさ??


VENUSがクルセイドにとって大切なもので、お母さんが奪ったブツっていうのはよく分かったんだけど……それが、なんで、私に関係があるんだろう。


そこがよくわからなくて首を捻ると、お母さんはニヤリと笑って


「美優。VENUSはアンタの中に隠れてる。」

「え、ええーっ?!」


奴はこんな恐ろしいことを言い出した。




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