マイハニー
その時部屋をノックする音が聞こえた。


「入るぞ?」
「…」


窓から月明かりが差し込んできて
薄ぼんやりとした明かりが、
心配顔のお兄ちゃんを照らす。

タオルケットを慌てて頭まで被る。
お兄ちゃんが腰を掛け、ベッドが軋んだ。


「何かあった?」
「…」
「下で2人共心配してた」
「…今、何時?」


タオルケットの中から聞くと
お兄ちゃんは腕時計を確認したのか、
ピッという電子音が聞こえ、
12時過ぎ、と言った。


「具合悪い?」
「…」
「夕飯も食ってないって?」
「…」
「何も言いたくない?」
「…」
「じゃぁ…部屋に戻るわ」


タオルケットの上から頭を軽くポンポンと叩かれ、
立ち上がろうとした。
私はお兄ちゃんの腕を慌てて掴む。


「…帰ってくるの、遅い」
「今日遅くなるって言ったじゃん」


お兄ちゃんがそっとタオルケットを捲った。
真っ赤に腫れた目を見られる。


「…泣いてたの?」
「…」
「何があった?」
「…」
「岡田と喧嘩したのか?」
「…」
「サヤ?」


私はお兄ちゃんが問いただしてくると
枯れたと思ってた涙が、また吹き出し、頭をぶんぶん振る。
頬にこぼれる涙をお兄ちゃんの指が優しくぬぐった。

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