カンボジアのコト

笑顔

さてさて、お昼も過ぎたことですし、昼食です。
高木先生が言いました。
「いいこと。あんた達、絶対笑顔よ。笑顔。食べなくても笑顔。」
どういうことでしょう…。
その理由は、ほどなくして分かった。
食事は、近所のレストランで食べます。
人数が多いので、私達のために、貸し切りにしてくれました。
…ガレージじゃん。
それも、シャッターのついてないやつ。
ガレージにイスとテーブルがある。
料理が、じゃんじゃん運ばれてきて、じゃんじゃん蠅がたかる。
…………食べたくない。
高木先生が、どすの聞いた声で、
「笑顔。」
とつぶやいた。
慌てて「イー」と発音するつもりで、笑顔をつくる。
ここの人達にとっては、誕生日が来たって、お正月が来たって、
これほどの豪華な食事は食べられないという。
テーブルに並べられているのは、大きな魚と、野菜炒めと、スープと、山盛りの白いご飯に、ジュース。
一人ずつにすれば、定食だよ…。という代物。
とりあえず、席について、食べ始めることになった。
が…しかし、蠅を無視した所でまずい。
魚が泥臭くて、2口目を喉が拒否する。
スープも臭い。
香草が臭いのと、水が臭いのと……うーん。
と思っていると、呪文のように聞こえてくる。
「笑顔、笑顔、笑顔、笑顔、笑顔…。」
とりあえず、つがれたご飯を食べた所、さて、どうするかと思っていると、
横に座っていたエンドーが、私の皿に食べ物を載せる。
「あんたが食べなさいよ!!」
「私はお腹いっぱい。」
………こいつ。
と思っていると、一緒に来ていた、赤ちゃんが泣き出した。
近くの女の子が立ち上がり、赤ちゃん抱っこして、レストランの外を歩きながらあやしだした。
ママは知らぬ顔でご飯を食べている。
これ幸いにと、私は、ごちそうさまをして、席をたち、女の子についていくことにした。
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