Distance of LOVE☆
ゆっくりと…

お父さんの過去から…現実に戻ってくる。


私の頬には、いくつもの涙の筋が伝っていた。



お父さんとお母さん…

そんなことがあったんだ…

知らなかったよっ…


自殺まで図るくらい…

私を産みたかったんだね。

その…意思表示だったんだ。

私のためなら…命を懸ける覚悟も出来てる、っていう。


でも……

自殺未遂で、良かったよ。

お母さんの娘として…生まれてこれたんだもの。


お父さんの話を聞いて、私は、無性にお母さんのもとに行きたくなった。


謝らなきゃ。


お父さんの話を聞いて…

分かったんだもん。


流産の危機にあるときでも…お母さんは強い人だった。


その娘の私が…

簡単に中絶を選んだ。

雅志に迷惑をかけたくない。

一回育児の道にいくと、獣医師の仕事をしながらの両立は大変だから、という噂を聞いたことがあるから…
…これだけの理由で。


ショックだっただろう。

産婦人科医としても…

親としても。


…自分は…なんてバカだったんだろう。

お腹の子は…ちゃんと育てていく。


もう…中絶なんて考えない。


「ふふ。
その顔で行くの?」


雅志にそんなことを言われた。

さすが。

分かってるんだね?

これから私が…どこに行って、何をしようとしているか。


「いいでしょ?もうっ…///」


ほんの少しだけ、まだ目尻に残る涙の粒を、服の裾で拭ってくれた。


そして、一瞬だけ抱き寄せて、


「行ってらっしゃい。」


の一言。


「行ってきます!!」


そう言って、病室を出た。
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