【完】そばにいるだけで



一人ドキドキしながら扉の前に突っ立っていた時、お腹の大きな妊婦さんが同じ車両に乗り込んできた。



わたしは、その妊婦さんをそれほど意識していなかったのだけど、桐生くんが突然立ち上がり席を譲ったので、その二人の様子を凝視してしまった。



いつもどおり、それほど笑顔は見せなかったけれど、席を譲るその動作はとても自然でスマートだった。



美青年に席を譲ってもらったその妊婦さんは、満面の笑みでお礼を言っていた。



その笑顔は弾けんばかりで、大人の女性なのにかわいいと思った。



そしてうらやましかった。



あんなに素直なかわいい笑顔ができるなんて。


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