【完】そばにいるだけで



「相手の気持ちとか、いろいろと考えてしまうから、しゃべれなくなることもあるのかもしれないね、桐生くんは」



わたしがそう言うと、瑞希は感心した様子で、



「そっか……なるほどねぇ。そうだね、桐生くん、冷たい人ではないもんね」



と言って、うんうん、とうなずいた。



そして、わたしに向き直り。



「だけどさ。聖菜」



「なに?」



「だったら尚更だよ。このままだと本当に誰かに取られちゃうよ、桐生くん」



たしかに。



桐生くんの良さを知れば知るほど、好きは募る。



そうなれば、彼が誰かのものになってしまうのは、時間の問題かもしれない。


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